レーザー距離計で「幅を測りたい」というお問合せは、毎日のように頂きます。ネットで「レーザー距離計 幅」と検索されて当サポートサイトにいらっしゃる方も多いです。
ライカのレーザー距離計 DISTO の仕様は「直線距離 10m で ±1.0mm」とお伝えしていますが、DISTOで幅(2点間の距離)を測ったときの精度はどれくらいなのか。
今回は、レーザー距離計 Leica DISTOを使って、巻尺で実測した2mほどの場所に対して、いくつかの異なる方法で幅(2点間の距離)を測り、その精度を比べてみます。
DISTOシリーズを使って幅を測る方法はいくつかありますが、測定方法(機能)が異なることで、精度も変わってきます。
「数ミリ程度の誤差にとどめて測定したい」のか、
「数センチ程度までの誤差なら許容範囲」なのか。
実際の用途をイメージして頂きながら、ご覧いただきたいと思います。
目次
測定環境
室内でパネルの幅(下図)を測ります。パネル上に描かれた赤い縦線・横線の交点2箇所に、レーザーを照射して測定します。
実測する
あらかじめ、2箇所の距離を巻尺で計測し、幅の長さを把握します。2点間の距離は1.5985 mです。
2点間距離(P2P)測定機能
Leica DISTOの「2点間距離測定」は、離れた場所からでも、幅・高さ・奥行き・斜めの距離など、任意の2点間の距離を測ることができる機能です。2点間の距離を、3次元の座標情報を用いて算出します。
「DISTOで測定した直線距離の精度が 10mで±1.0mm なのだから、二点間距離測定でも同じくらいの精度が出るのだろう」と思われる方が多いのですが、距離の出し方が全く異なるため、残念ながらこれは誤りです。
2点間距離測定機能における測定精度は、以下の通りです。
2m で ±2.0mm
5m で ±5.0mm
10m で ±10mm
対象物までの距離に応じて精度が変わるので、近ければ精度は上がります。これも、対象物にレーザーを正確に照射することが大前提です。
では、2点間距離測定に対応したDISTOモデルを使って測定してみます。それぞれにアダプター、三脚を取り付けています。2機種とも、測定前にレベリング済です。
- Leica DISTO X4: アダプター DST 360 + 三脚 TRI 120
- Leica DISTO S910: アダプター FTA 360s + 三脚 TRI 70
約3m 離れた場所からの測定
パネルから約3m離れた場所での、2点間距離測定の結果です。
- DISTO X4: 1.597 m / 1.598 m
- DISTO S910: 1.596 m / 1.601 m
- (参考:実測値 1.5985 m)
約8m 離れた場所からの測定
パネルから約8m離れた場所での、2点間距離測定の結果です。
- DISTO X4: 1.595 m / 1.599 m
- DISTO S910: 1.602 m / 1.601 m
- (参考:実測値 1.5985 m)
このように、対象物からの距離が大きくなるほど、実測値との開きが大きくなっています。2点間距離測定機能では、毎回同じ値が出るほどの精度は出ません。出来るだけ精度よく測定するには、以下の点にご留意ください。
可能な限り、対象物に近い場所から測定すること
より精度の高い2点間測定をご希望の場合は、Leica 3D Distoという選択肢もあります。この製品は、10mで±1.0mmです。
写真を使った幅測定(DISTO D810 touch)
パネルから約4m離れた場所で、DISTO D810 touch の 【写真を使った幅測定】機能を用いて、手持ちで測定しました。この機能は、写真のピクセルと、対象物までの距離から、三平方の定理を使って長さを計算しています。
- Leica DISTO D810 touch: 1.603 m / 1.605 m
- (参考:実測値 1.5985 m)
写真を使った幅測定の機能は、Leica DISTO D810 touch / S910 のみ対応しています。
ピタゴラス機能による測定
パネルから約3m離れた場所で、Leica DISTO X4 のピタゴラス機能を使って、2点間の幅を測定しました。
- Leica DISTO X4(本体手持ち): 1.614 m / 1.592 m
- Leica DISTO X4(アダプター取付): 1.588 m
- (参考:実測値 1.5985 m)
手持ちでの測定では、もはや仕事に使えるレベルではありません。ピタゴラス機能を使って仕事に耐えうる精度で測定することは、ほぼ不可能です。そのため弊社では使用をお奨めしていません。
対象物への正確なレーザー照射
レーザー距離計による幅の測定精度は、対象物に正確にレーザーを照射しているか否かに大きく左右されます。これは2点間距離測定機能が、3次元の座標情報を用いた演算により、距離を算出しているためです。レーザーの照射点が数ミリずれている(右写真)だけでも、測定結果には大きな差が出てしまいます。
できるだけ精度よく測定するためには、視認によりレーザドットの位置を正確に合わせてから、測定を行ってください。
まとめ
ここまでご覧になってお解り頂けるように、できる限り精度よく、幅を測りたい場合には、
Leica DISTO X4 または S910
をご使用いただくことをお勧めします。
「何を、どれくらいの誤差の範囲で測りたいのか」を明確にし、レーザー距離計に搭載された各機能の特性を理解された上で、最適なレーザー距離計をお選び頂きたいと思います。
レーザー距離計DISTOシリーズは、ホームセンターをはじめ、
インターネットや家電量販店でお取扱いがあります。
また、企業で購入される場合は、機械工具・計測機器関係の商社、
測量機器の代理店でもお取扱いがございますので、
御社のお取引企業へお問い合わせください。
レーザー距離計の在庫やデモ機がある店舗、
3D Distoやレーザー墨出し器Linoの見積依頼をお考えの方は、
下記をご参考になさってください。